ちいさな恐怖を乗り越える。不安に怯えるぼくが初めてドリンクバーを自分で取りに行く話。

黒井のこと(エッセイ)




まいど、黒井です。

とつぜんですが、あなたはファミレスのドリンクバーやバイキングのお店で、食べものや飲みものを取りに行くのが「怖い」と感じたことがありますか?

ぼくの答えは「イエス」。

おおいにあります。

何を見ても怯える生まれたてのアヒルのようなぼくは、ファミレスやバイキングで食べものを取りに行かなければならないとき、とても抗えないほどの強い不安感、恐怖感にさいなまれるのです。

食べものを取りに行こうとするとさまざまな不安が。

ファミレスのドリンクバーやサラダバー、バイキングスタイルのお店へ行くと必ず、

  • グラスを落として割ってしまったらどうしよう
  • 食べものがのったお皿やうつわを落として床を汚してしまうかも
  • 手がふるえてトングでつかんだ食べものを床に落としてしまったら

など、つぎからつぎへ「もしも」の不安が脳裏をよぎり、パニックを起こしてしまうのです。

しだいに手や足がふるえてきて、過呼吸や、さもなければ胸が苦しく呼吸が困難になります。また、寒気がしたり、腹痛や頭痛を感じたり、胸のあたりに痛みを覚えることも。

ここ数年、ファミレスでドリンクバーやサラダバーを注文したときには、いつも母に食べものや飲みものを取ってきてもらっていました。

 

もうひとつの不安。

母に食べものや飲みものを取ってきてもらうようになり、自分で行かなくてもいいのだと安心するいっぽうで、べつな不安を感じるようになりました。

それは、

黒井
このままではいけない……

という不安、そして焦りです。

自分のニガテなことを代わりにやってもらう。それ自体は良いとしても、「ニガテだけどできる」のか、「ニガテだからできない」のか。このふたつのあいだには、けして超えることのできない高い壁があるように感じます。

 

生まれたてのアヒル。

そもそもぼくにはニガテなもの(こと)が多すぎる。

小中学生のころにひどくイジメられており、不登校児となってからは一転してまったく他人と関わらない生活を送ってきました。

そのせいで、ぼくの頭にはすっかり「人間=恐ろしい生き物」という常識が、べったりと定着してしまっているように思います。

恐ろしいのは、何も「ドリンクバー」や「サラダバー」だけではないのです。

きょうのちいさな一歩。飲みものを取りに行く。

きょうは母とバスに乗って近くのショッピングモールへ行きました。ちょうどファミレスで昼食をとることになったので、勇気をだしていいました。

黒井
ドリンクバー、自分で取りに行くよ。

母は目を丸くして、それから笑ってくれました。

 

手はふるえた。でもこぼさなかった。

自分で取りに行くといっても、ふたりで来て、ふたりでドリンクバーを注文しているので、ふたりで取りに行くことに。それでもえらく緊張しました。

グラスに氷を入れて、それからウーロン茶のボタンを押す。

グラスを持ち上げるとき、ひどく手がふるえていました。キンキンに冷えたグラスは汗をかいていて、その水滴で、つるんっとグラスがすっぽ抜けてしまわないか。落としたらグラスは割れてしまうだろうか。つぎつぎと頭に不安が浮かんでくる。

でも、なんとかこぼさず、テーブルまで運ぶことができました。

 

なんだよ、そんなこと……

と、あなたはお思いかもしれませんが、ぼくとしては、ちょっとした進歩なのでした。

おわり。