どうも、黒井みなみ(@961373)です。
フィルムアート社から出版されている翻訳本【天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々】を読み終わったので感想を。
まず最初に言いたいことを書いちゃいます。この本おもしろい! おすすめです。
161人の天才の記録
【天才たちの日課】では、161人の「天才」たちの日課についての記録が紹介されています。小説家や漫画家などの創作者や表現者から政治家まで、幅広い「天才たちの日課」についての記録です。
本の副題にもあるように、それは「必ずしもクリエイティブでない日々」なんですけど、これがまたおもしろい。およそ「クリエイティビティの溢れる行動には思えない」ような習慣でも、その日課は当人の精神を落ち着かせたり、頭の中のチャンネルを「仕事」に切り替えるための大事な儀式であったりします。
【天才たちの日課】は、数々の天才たちの「頭の中」や「日々の日課」や、あるいは「日々の苦悩」を知ることのできる貴重な本です。
あんまり働いていない?
【天才たちの日課】に登場する数多くの天才たちに共通しているのは「それほど働いていない」ということです。もちろんなかには自分自身を「ワーカホリック」と称する方もいます。
一般的な「仕事」とくらべて「集中力」や「創造力」が必要とされる仕事をしているひとが多いということもありますが、登場する天才たちはおおむね「6時間」ほどしか働きません。
生涯に425冊もの本を出版したベルギー系フランス人作家の「ジョルジュ・シムノン」は、二十世紀のもっとも多作な作家のひとりとして数えられていますが、そんな彼は、集中的な執筆期間でさえ「3時間」ほどしか書いていないんです。
集中的な執筆期間でも、シムノンは一日にそれほど長時間書いてはいない。標準的なスケジュールはこうだ。午前六時に起床。コーヒーを確保して、六時半から九時半まで執筆。そのあと長い散歩に出かけ、十二時半に昼食、一時間昼寝。そのあとの午後の時間は子どもたちといっしょに過ごし、また散歩に行く。それから夕食を食べ、テレビをみる。十時に就寝。 – 天才たちの日課 345ページより
その「3時間」に彼はどれほどのクリエイティビティを発揮しているんでしょうか。大事なのは「どれだけ働いたか」ではなく「どれだけのものを生産したか」です。
しかし現代ではしばしば「こんなに働いている」とか「こんなに残業した」といったことが、誇らしげに語られています。もちろん「業務時間内にひとりの人間には達成不可能な量の仕事」を任されている場合もあるでしょうし、そのときは残業もやむなしと考えますが、もう少し工夫をすれば残業せずに済むのでは? と思うことも多々あります。ニートのぼくが言っても説得力ないですけどね。
日本人として誇りに思う
【天才たちの日課】に登場する161人の天才たちの中に、ひとりだけ日本人がいます。小説家の村上春樹さんです。
彼の日課や習慣、仕事に対する考えかたについては【職業としての小説家】などの書籍でも見ることができます。天才たちの日課では、彼が2004年のパリス・レビューでのインタビューにおいて語った言葉を引用しています。
長編小説を書いているとき、村上は午前四時に起き、五、六時間ぶっとおしで仕事をする。午後はランニングをするか水泳をするかして(両方するときもある)、雑用を片づけ、本を読んで音楽をきき、九時に寝る。「この日課を毎日、変えることなく繰り返します」二〇〇四年の『パリス・レビュー』で村上はそう語っている。 – 天才たちの日課 97ページより
またこの直後の文が村上春樹らしいなと感じさせるんですよ。
「繰り返すこと自体が重要になってくるんです。一種の催眠状態というか、自分に催眠術をかけて、より深い精神状態にもっていく」 – 天才たちの日課 97ページ
だれにでも毎日繰り返している日課(ルーティン)があると思いますが、集中力や創造力をつかうことを習慣にするのはむずかしいですよね。とくに小説を書くことって、本当に疲れるんですよ。ぼくもへたっぴですけど書くので、よく分かります。書くことが好きでも「もう二度と書くか!」って、なっちゃうんですよね。
いい仕事、集中力や創造力をつかう仕事をするには、働く時間と同じくらい「休む時間」や「息抜きをする時間」が大事なんだなあ。
あとがき
ぼくもその「催眠術」がつかえるようになりたい・・・
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